◆例外論争

ゲ界一のファッション誌『ポプコム』には、高級言語に押されて防戦一方のマ界など似合わない……という連載当初の大方の予想を裏切って、ついにこのラジカルマシン語アワーが予定の6回を越えて続投することになった。

「ラジカルマシン語アワー、もっと続けてくれよ〜っ! これを読んでいると、"やる気"が出てくるのだよ〜ん!! ホエホエ」

こんなハガキは編集部に延髄斬り以上のダメージを与える。おっと、これは秋田県の読者の方から直接新日プロへ届いたハガキだった。でも、同じような声はきっと編集部にも届いているに違いない。読者のパワーは編集方針まで変えるのだ。イヤ「ゲ界はマ界の反面教師」であるがゆえに、この願いは読者サイドから出る編集部サイドの声なのかもしれない。ウ〜ム、大人の社会の真実は、実にわかりにくい裏があるもんだ。そんなわけで、マ界の勇者・佐々木武蔵の冒険の旅は続く……。

武蔵がタモリ博士に教わったのはモニタの使い方だが、それ以上に大切なモノを博士は与えてくれた。というより、それは博士にとっては不本意(?)にもプレゼントになってしまったのだが……。

後に博士が「あなたは例外だ」と友人としての結果を喜びながらも、自分の予想がハズれたくやしさを表現したことがあったが、それは「あなたにはマシン語は無理」という最初の言葉の延長線にすぎない。だけど、武蔵は例外なんかじゃない。ただ、その言葉の効果が例外だったのだ。だって、武蔵の闘魂を刺激し火をつけたのは、他ならぬその不可能宣言だったのだから……。

武蔵「できないというけど、中学生でできる人もいるらしいじゃないか?」
博士「いるよ。でも、中学生だってソロバンの日本一になる天才もいる。そういうレベルの人ができるからといって、誰でもできるというのはおかしいだろ」
武蔵「もちろん。でも、彼らは最初からできたわけじゃない。小さいころからソロバンの特訓をしてきたからできるのだ。パソコンには、それだけの歴史がないじゃないか!」
博士「そのとおり。だけど、これは経験からして誰にもできるものじゃないんだ。技術者の中にだって、やろうとしてできなかった人間がたくさんいるんだから」
武蔵「それじゃ、できるかできないかは才能次第ということかい?」
博士「残念だけど、それに近いというしかないネ」
武蔵「でも、いくら才能が必要でも全然できないというのは納得できない。野球だってプロの選手にはなれなくても、草野球なら誰にでもできる」
博士「言い出したら聞かないんだから、もう。とにかく年齢的にも無理だから、あきらめたほうがいいってば……」
武蔵「でも、アンドレ(注:大巨人のこと)だって小錦だって生まれたときは赤ちゃんだった。瀬古選手(←もう引退してしまった)だって、生まれたときは歩けなかった。今できないからといって、将来もできないというのはおかしいヨ」

こんな会話が何度繰り返されたことか。もちろん、博士もアントニオ猪木の闘魂を見るために、武蔵と試合会場へ行った仲間。闘魂を知らないわけじゃない。ただ、プロレス以外に闘魂をムキ出しにする男がいるとは……。頭のいい博士のメモリにも、まだ入っていない情報があったようである。


※ 時は流れて……

あのアンドレ・ザ・ジャイアントは、すでに故人。小錦も引退。瀬古選手はSB食品陸上部の監督になり現役時代の勇姿を知らない人が多い。アントニオ猪木でさえ、新日プロを離れて新たにUFOなる団体を率いている。時間は止まることなく、どんどん流れているのだ。
なのに、この新日本プログラミングときたら相も変わらず「燃える闘魂を旗印にプログラミングに夢とロマンを……」などとやっている。まるで成長しないお地蔵さんみたいだが、いつも未来を見つめていることだけは確か。いったい、どんな未来が待っているのだろうか……。