お城といえば、それぞれに好みの基準があると思うが、個人的には石垣と天守閣だけの「小ぢんまりと絵に描いたようなお城」に心を惹かれる。理由は単純で、忍者マンガの中で見た記憶とそのまま重なるからだ。そういう意味で、日本では彦根城が最大のお気に入りとなっている。
実は、イギリスにもたくさんの古城があり、かの放浪時には歴史や由緒も学ばずに、単なるお上りさん的に見学に出向いていた。キッカケとなるのは、ほぼ旅行書にあった写真。その中に、絵本に出てきそうな「お城らしいお城」があった。それがボーディアム城(Bodiam Castle)だ。
たいていのお城は鉄道駅から徒歩圏内だが、ボーディアム城へはバスの利用が必須。そんな交通事情もあって、観光客はあまり多くない(←50年以上前の情報)。しかも、外観とは裏腹に内側は石が崩れてボロボロ…なのに、お堀(←moatという)とのコントラストがマッチして、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような気分になれるのだ。
剣と魔法が似合う中世の風情ある荒城に、つい保存目的で絵葉書を買ってしまった。旅行中、誰かに一筆という目的以外で購入したのはこの1枚のみ。記憶に残すだけでなく、形ある宝物として持ち続けたかったのだ。ちなみに、絵葉書というと日本では複数セットが普通だが、外国では実用としてバラ売りされるほうが一般的…だった。
誰しもそうだと思うが、旅の写真にはいろいろな思い出が詰まっている。ボーディアムでは、一緒に行ったドイツ人のカール(←ビール大好き)に、強引に立ち飲みパブに誘われたことで、ビールの単位がパイントであると初めて知った。日差しの強い夏の日だった…。
おっと、ここでそんな想い出話をしようというのではない。本題の主役は、それほど大切で思い入れのあるボーディアムのお城が、使い捨ての背景素材として扱われていた…という悲しいお話なのである(←あくまでも勝手な被害妄想)。
T&Eソフトの『ハイドライド』といえば、同社を代表するゲームとして知られているが、これは作品が世に出る直前にパソコン誌≪1984年12月号:発売は11月≫に掲載された広告である。未だに記憶に残っているのは、もちろんゲームそのものに対する興味からではない(←失礼)。
瞬間的には「ボーディアムのお城を題材にしたゲーム?」とドキッとしたが、どうやらそういうことではなさそう…。それどころか、翌月以降は中世をイメージさせる数々の写真を取り上げ、新作の世界観を演出する販売戦略の一環(?)に過ぎなかったのだ。
もちろん、すべては広告代理店が膨大な資料から選んだイメージ画像であることは想像するに難くない。だけど、よりによって私の秘城が…と思うと、どうにもこうにもやるせない。あのボーディアムのお城を、こんな形で見知らぬ他人様に知られたくはなかった…と嘆いても、それこそ唯我独尊の論理展開。それがまたツライ…。
ということで、ボーディアムのお城は意外な形で自身の前に再出したのだが、そもそもあの広告を見て「アッ、ボーディアムのお城だ!」と気づいた方がいたのかどうか、ようやく冷静にそんなことを振り返れるようになったのである。成長したのかな?