●カミキリムシをさがせ!

 無花果と書いて「イチジク」と読むように、イチジクの木に形のある花は咲かない。いきなり小さな緑色をした実が誕生し、なかなか大きく育たない…と思っていると、ある日突然膨らんで赤く熟れ始めるのだ。
 本当は花を袋で包んだものが実の正体ということなんだけど、赤くなるまでは鳥も食べない。ところが、イチジクの実の状態がどうであろうと、なぜかカミキリムシはイチジクの木が大好き。どこからともなく寄ってきては、木を食い荒らして卵を産み付ける。

 いわゆる害虫なので、どうにかしてカミキリムシを退治しなければならない。幼虫のいる穴に殺虫剤をしみ込ませた脱脂綿を入れて粘土で塞ぐ…なんていう対策は、実際には手間ばかりでやってられない。結局のところ、見つけ次第捕獲というのが簡単で手っ取り早いみたい。
 ただし、問題はカミキリムシを如何にして発見するかということ。敵もひっそりと存在を隠しているわけで、セミのように「我ここにあり」と誇示してはくれないのだ。

 例えば、この画像のどこかにカミキリムシがいるのだが、スンナリと発見できただろうか? まるで『ウォーリーをさがせ!』みたいでしょ。しかも、どちらも大前提として「どこかにいる」という正解のある点も共通だ。

 でも、世の中というのは正解の有無すらわからない未知なる世界。カミキリムシだって、探した結果「いるかもしれない」し「いないかもしれない」のだ。あるいは単に「見逃しているだけ」なのかもしれない。おまけに、どちらかというと「めったにいない」のである。

 さらには、葉っぱの表面にいることもあれば、裏側にいることもある。枝にジッと静止していることもあれば、反対側に移動することもある。イライラしそうなので、その存在をズームアップしてみよう。

 中央付近に、カミキリムシの長いひげ(触角)があるのがわかるだろうか? カミキリムシを探すときは、本体ではなくこの触角を見つけるのがコツなのだ。

 このあたりは、かつて昆虫少年として収集に熱中した経験が役に立つ。といっても、そのころは蝶の採集がメインで、カミキリムシなどの甲虫類はオマケの産物だった。そんなわけで、ついつい口ずさんでしまうのが童謡『かわいいかくれんぼ』の替え歌だ。

 オリジナル「ひよこがね お庭でぴょこぴょこかくれんぼ…」

 〜カミキリさん イチジク食べずにかくれんぼ
  どんなに上手に隠れても 立派なおひげが見えている〜

 その姿を発見したら、ソッと真下に百均で買った捕虫網を構える。単に捕まえようとすると、逃げの一手のように落下して、どこにいるのかわからなくなってしまうからだ。捕虫網に入ったら、申し訳ないけど「一巻の終わりです!」とささやいて、石でつぶす…。
 残忍なようでも、それはそれで食物連鎖としてアリさんのエサになっているのだ。毎日のように数匹は処分しているけど、翌日にはきれいサッパリなくなってしまう。

 そういえば、子供のころ捕獲したカミキリといえば、ほとんどがゴマダラカミキリかシロスジカミキリだった。これも、せめて名前くらいは調べておかねば失礼…ということで、角度を変えてさらにズームアップしてみた。

 正式な名前は「キボシカミキリ」という。触角を除く体長は3cm前後。あまり大きくないし、歯もそれほど鋭くない。大型のシロスジカミキリなんかは、ニッパーのような口で「ギィギィ」と音を立てていたくらいだから、存在としての迫力はゼロなんだけど、やはり見逃すわけにはいかないキボシカミキリさん…であった。