●その後のイムジン河

 非常にマイナーな話題だが、かの『燃える闘魂マシン語伝説W』の巻末に「捜し物」というタイトルの落書きがあった。10行にも満たないものなので、たとえ同書を持っていても気づかなかったかもしれない。


捜し物
 あれは、もう30年(←本文中では25年と記述)以上も前のこと。ザ・フォーク・クルセダーズというグループが『帰って来たヨッパライ』で、華々しくデビューした。そして、その第二弾として企画されたのが『イムジン河』だった。美しいメロディと彼らのハーモニーがマッチし、大ヒット曲となるのは時間の問題であった……が、レコード発売数日後に著作権問題とかで発売中止(製品回収)となってしまったのだ。
 それ以来、彼らの歌う『イムジン河』は二度と耳にすることができない。私は、生きている間にもう一度この曲を聞きたい。頼みのツナは、その数日間に売られて回収されなかった分だけ。いわゆる「高価買入」でも録音したテープでもいい。お願い、誰か協力して!
 実は、ここには記憶違いがあり「発売数日後」ではなく「発売日直前」に発売中止となっていたのだ。ただ、当時はレコード店での先行販売が珍しいことではなく、フライングで入手できる可能性がおそらくあったはず……という願いにも似た思いが、長い年月を経て「発売数日後」となってしまったらしい。いずれにせよ、それは私にとって幻の名曲となってしまったのだが、数年前にそうした経緯がテレビで特集された。しかもオンエアー禁止となったはずの曲の一部を実際に流して……。
 だが、再発売の可能性を示唆した大手のレコード会社も、結局のところはノーアクションのまま。もう永遠に……と思っていたところ、なんとインディーズから4年ほど前に発売されていたことがインターネットでわかったのだ(CDSL-4026:SOLID RECORDS)。それからしばらくして、30年来の夢が叶ったうれしさに、久々の感激と感動を味わったのであった。音楽って、こういうものだったんだ。生きててよかった!

 ……こう書いたのが、1999年3月のこと。その後、2001年の紅白歌合戦でキム・ヨンジャが歌い、さらにはザ・フォーク・クルセダーズのシングルCDとしても復刻発売され、ヒットチャートにも入った。たかが一曲の音楽だが、時代が数奇な運命をたどらせたわけである。とりあえずは、30数年越しのハッピーエンドでメデタシ・メデタシ……といえよう。