☆ 会社組織のムムムッ! ≪初出『ポプコム』'91.4月号≫

 24時間働けますか〜ッ? と聞かれりゃ、ひたすら頑張ってしまうのがビジネスマンというもの。でも、それはいったい誰のため? 自分のため? それとも会社のため?
 アレッ、会社って何なのだろう。社名なんて紙に書いて登記しただけだし、社長も肩書きがなけりゃ同じ人間だ。その中で働いている社員は、意識も同じサラリーマン。
 これじゃどうにもつかみようがない。唯一、会社としての実体を誇示している社屋も、引越しすれば他社の顔。結局、会社なんてスライムのように不定形で、実体をつかめない働く虚像なのだ。
 確かに、そこには個人では不可能なことを実現する集団のパワーがある。まるで小鳥の大群が巨大な鳥の形を描きながら大空を舞うように……ねッ。
 だけど、それは個々の人格を無視して成り立っているだけ。人間は集団の中に生きながらも、それぞれが異なった人生を歩んでいるのだ。会社のために24時間すべてを捧げて何が残るか。すべてを失った先には、ただ過労死が待っているだけ。
 一羽の小鳥など、会社という巨鳥を描く大群にとっては、星のように小さな存在。おだてられてはいけないのだ。賢い小鳥は、ときどき群れから離れて自由を満喫する。そんな冷静さが、ホントの勇気の印なのかもしれない。


≪時は流れて……2004年9月≫
 思えば、コンピュータの黎明期〜成長期というのは、ちょうどバブルの時代と一致している。ある意味では、この肥大化するパワーもバブルを形成する一翼を担っていたと断言できるだろう。
 この「24時間働けますか?」とか「勇気の印」というのは、某ドリンク剤のCMで流されていたものだが、これもまたバブル期ならではのもの。といっても、現在ではリストラの影響で残留組には過酷な労働がしわ寄せ的にもたらされており、結果として同じような境遇で働いている人も少なくない。
 ちなみに、賢い小鳥とは「フリー」でも「フリーター」でも「フリーランサー」のことでもない。そうした職業スタイルを超越した「社会に適応した心の自由」を、その象徴として大空に飛翔させた例え話である。