■ ご挨拶:第84回(2020年2月2日)■

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 本日のご来場、まことにありがとうございます。いろいろな場面で「昔はよかった!」という言葉を耳にすることがあると思います。これに対し、あらゆる製品は進化成長し、生活環境も格段に改善されているのだから「昔より悪いはずがない!」という反論の声も聞こえます。あるいは、そう思うこと自体が年老いた証拠だと問答無用に切り捨てられてしまうかもしれません。
 とりあえず身体能力に対する「昔はよかった!」論は、老化という万人共通の宿命への嘆き…すなわち「衰えに対する自覚と愚痴」として、やさしく見逃してあげましょう。誰だって、生きていればやがては「昔はよかった!」となる日がやって来るのですから…。
 それ以外のことは、各人の立場や置かれた状況によって判断の分かれるところですが、カギとなるのは月日の経過に伴う自然環境の変化です。これをどのように位置づけて評価するか、結局のところは個々の価値観次第…ということになってしまうのでした。

 こんな不毛な結論を前提にした上で、それでも「昔はよかった!」と客観的に断言できることがあります。それは…かつては身近にたくさんあった難易度の低い夢です。
 夢というのは、叶うまでが夢であり、叶った瞬間に雲散霧消してしまう「心に描く蜃気楼」のような存在です。追い求めてきたイメージに手が届いた瞬間、念願成就の喜びは想い出のヒストリーとなり、目標消滅の空しさがクロスして台頭してきます。同時に、それは新たな夢を見つけるための孤独で虚無な「夢探しの旅」の始まりでもあります。
 戦後の何もない時代に比べ、物質的に豊かになり品質も向上した現代は、すべての分野においてレベルが高くなっています。夢を「現実を超えたところにある未来像」と解釈するならば、平凡な夢がゴロゴロしていた昔は、確かにシンプルでよかったに違いありません。
 もっとも、これは他人と競争することを前提とした夢であって、自己ワールドの中で満足できる夢なら無限にあります。インターネットに接続しているだけで、夢へのヒントなど探さなくてもいくらでも飛び込んでくるでしょう。
 そんなわけで、このところ「やりたいことが現れ過ぎて目の前は蜃気楼だらけ」になってしまいました。あっちを少し、こっちを少し…というように、1日を時間単位で割り振らなければ収拾がつかないほどですが、客観的には「無駄に多忙」な日々かもしれません。

 それでも、心の片隅にあるのは常にトレーニングのこと。毎日は無理でも、気持ちが途切れることなく継続していたらどうなるのか、いつのころからか自分を使っての人体実験と自覚するようになりました。11歳からなので…間もなく60年です。
 近年はトレーニング好きな芸能人もたくさんいますし、高齢者でもトレーニングをしている話はよく聞きます。昔もそれなりに存在していたのかもしれませんが、ネットのない時代は「わからないことは自分で確認する」しかなかったのです。
 いつまでこんな実験を続けられるのか不明ですが、根底にあるのは「昨日できたことは今日もできる。半年前だと不安がよぎる。1年前だと自信をなくす」という自作の格言です。
 これを身体に当てはめると、単純にトレーニングをすることになるのです。その結末は…死ぬまでわかりません。だからこそ「人生をかけた人体実験」なのであり、いつの日かそこに医学的価値が見出されるかも…という、実に壮大で小さな夢なのでした。


〜〜〜〜 ちょっと一言ご挨拶(2020.6.30)〜〜〜〜

 昔…というほどではないが、この『ご挨拶集』(第64回)でわが愛車の走行距離が200,000kmを超えたという話をしたんだけど、おそらくは誰の記憶にも残っていないと思う。そりゃそうだヨね。他人の車の走行距離なんて実にどうでもいいことなんだから…。
 あれから6年半。17年目に突入した「かつての新車」の走行距離が、この4月に300,000kmとなったのだ。どうでもいいと知りつつ、やっぱり何となくうれしくて記念撮影!

 自動車部時代…車のオイルは真っ黒が当たり前だった。オイルは減ったら補充するだけ。それが一転して半年毎のオイル交換、1年毎のフィルター交換、さらには毎週の洗車…と手をかけるようになったのは、心底から「お気に入り」だったから。可能な限り大切に乗りたかったのだ。
 そんな気持ちが車にも伝わったのか、これまでに交換したのはタイヤと通常バッテリーのみ。マフラーもブレーキディスクも購入時のままだし、不安があったハイブリッド用バッテリーも、衰えはあるものの気丈に頑張ってくれている。常識的には「奇跡に近い!」ような頑丈さだ。
 もちろん、回生ブレーキを意識するなどハイブリッドの特性を活かす運転を心掛けているけど、こうなると限界を見極めるのが難しい。何しろ月間1,000km以上を走るだけでなく、木材や砂・ブロックといった建材を満載(←最大積載量750kgの範囲内)して運ぶのだ。どこかで悲鳴をあげるんじゃないかと、内心ではいつもヒヤヒヤしているのである。

 大半のドライブは埼玉の自宅と栃木県にある先祖代々の田舎の往復(片道約125km)。時間にして概ね3時間半ほどだ。基本的に高速は使わないので、気晴らしに車のナンバーをチェックして楽しんでいる。
 かつては番号を選ぶことができなかったけど、今はお金で望みの番号を手に入れられる時代。その割合がどれくらいかは知らないが、それらしい番号があれば勝手に購入の理由を想像してしまう。

【・・・1】:やっぱり何事も一番がいいのだろう。
【・777】:ギャンブル好きには最高の番号に違いない。
【・555】:きっと郷ひろみのファンだヨ。
【・123】:乗るたびに「ダァ〜ッ!」と叫ぶんだろうなァ…。
【・711】:アッ…誕生日が同じ所有者だ!
【2525】:いつもニコニコ…意外と多い。
【8888】:究極の末広がりとして人気があるらしい。
【1224】:毎日クリスマスイブの気分でいたいんだネ。

 そんな中、忘れかけていた「これだッ!」というナンバーに出合った。次に新車にする機会があればぜひ選びたい…ということで信号待ちのチャンスにパチリ!

 東大生は「素数かどうか」とか「全番号を用いた計算で10にする」といった楽しみ方をするそうだが、こちらは単純に九九で賢さチェックをしている。もちろん自分の頭ではなく、車の持ち主様の頭脳を一方的に評価するのだ。
 例えば【7956】だったら、計算が「間違ってますヨ!」ということ。79なら次は63にしなければダメでしょ。それとも上位を78にしてもよいけど、このままだと「通りすがりに笑われますヨ」などと眠気防止にゴチャゴチャ騒いでいたら…。
 同乗の家族から、何とも強烈なツッコミが入った。曰く「他人の車の番号より自分の車の番号を気にしたらどう?」だって。ゲゲッ…通りすがりに笑われる番号だった!