〜〜〜〜 ちょっと一言ご挨拶(2020.2.2)〜〜〜〜
こうした個人的なHPの文章は第三者のチェックを受けないが、パブリッシャー(出版社)が入ると作者のプロフィールでさえ思い通りにはならないことがある。最初にそれを痛感したのが、エニックスから商品化された『マジック・ガーデン』のプロフィール欄だった。
ここには「12ヶ月の歳月を費やした」とか、誇らしげに「自負しております」なんて書いてあるが、これらは決して自分の言葉ではない。そもそも1年前は『ホーンテッドケイブ』の開発中だし、基本的に謙虚と相反する「自負」には嫌悪感すら覚えるほど…。
だけど、パッケージ担当の女性に「ここは大げさに書くべきなのです!」と主張されれば、商品化してもらう身としては素直に受け入れるしかない。モメたところで売れ行きが左右されるわけではないし、単に印象が悪くなるだけだから。
そんな経緯を思い出しながら、ふとオリジナル原稿によるプロフィールはどうだったのか、古い資料のある本棚を捜してみたところ、アララ…どこにも見当たらない。察するに「12ヶ月の歳月を費やし」がなく、偉そうな「自負しております」のところは「大いに楽しんでください」だったような気がする。マ、今さらどうでもいいことだけどネ。
それはさておき、いろいろと古い著作物の資料に触れているうちに、プログラムに関するマル秘ノートに出くわした。そこにはゲームだけではなく、エディタ・アセンブラ『ROOT88』のワークエリア構成、サウンドやグラフィック開発ツールの使い方、さらにはプログラムの根幹となるアイデアの詳報が備忘録のように記録されている。
こうした資料がないと、たとえソースリストが残されていても、プログラムの解析は困難を極める。特にアセンブリ言語の場合、個々のルーチンの意図や目的が把握できないと、当時の心境をゼロから推察しなければならず、たとえ開発者本人であっても解読不能なこともあるほどだ。
そんなわけで、これは重要事項が詰まった門外不出の内部秘録…と誇張したいところだけど、しょせん本人以外には無用無価値の古いノート。いずれは、人知れずゴミとなって消滅するだろう。ある意味では、これこそ本物の『マシン語秘伝の書』かもしれない…。
商品化されていないツールの場合、最初から用法マニュアルすらないので、覚えているのはごく一部の機能だけ。このマル秘ノートを見て、改めて「そういえば…」と使い方を思い出したのであった。
いっぽう、私が唯一「謙虚になっても88最強のエディタ・アセンブラ・逆アセンブラ」と自負…じゃなくて自称しているのが『ROOT88』シリーズだ。単なるアセンブラと思えばそれまでだが、その裏側では独自に考えた多くのアイデアが駆使されている。
例えば、ディスクドライブ内に置いたプログラムからの圧縮転送とか、逆アセンブラにおけるワークエリアとプログラムエリアの判別手法とか、多くの秘密情報がこのノートには記されているのだ。
おそらく『ROOT88』付属の逆アセンブラ機能によって、どこかで誰かが『ROOT88』自体の逆アセンブルにトライしているかもしれない。果たして解析に成功したのかどうか、開発者としてはとても興味深い。
そのためには、当時の私のプログラミングの心境とアイデアを読み切れなければならないが、もしも完璧に解析できた人がいたとすれば、菓子折り持参でお目にかかりたいもの。さらには、この消えゆく『マシン語秘伝の書』を伝授して…なんて思ったりするのは、老人になった証拠だろうか?
アセンブラで思い出したのだが、実は『HIT-88』のエディタ部には隠しコマンドとして『ROOT88』と同様にカナ変換モード([Ctrl]+[H]で切り替え)がある。エッ!?
なぜ隠しコマンドとしたかというと、自分がカナ入力が苦手ということを宣言するようで恥ずかしかったからなのだが、そのまま公開するタイミングを失してしまったことにも起因している。書籍の段階で内緒にしたことで、いつどこで正式発表すればよいのかがわからなくなってしまったのだ。
あるとき、NECの技術担当者が『ROOT88』のカナ変換が便利と絶賛してくれたので、この話をしたら「これだけでも『HIT-88』の利用価値があったのに…」と残念がっていた。こうなると、なおさら公開し難くなってしまい、結局はこんな思い出話で…と相成ったのである。とにかく一言、ゴメンナサイ。
ちなみに、なぜカナ入力が苦手かというと背景は商社マン時代にある。当時(ネットのない時代)のリアルタイムでの通信手段は、電話かテレックス(専用機同士による文字の送受信装置)しかなかったのだが、このテレックスのカナキー配列が問題だった。
というのは、日本国内で主流だったNTT製のテレックスは、タイプライター(PCと同じ)とはカナ文字の配列が異なっていたのだ!
基本的に、英文タイプライターは英文作成が目的でカナ入力の必要性はほとんどない。いっぽう、国内通信にも多用されていたテレックスは、カナ入力の機会が比較的多かった。そんなことで、こちらのカナキー配列を必死になって覚えたのであった。
その結果、パソコンでのカナ入力はまるで文字探しのような状況になり、その不便さを解消するための手段としてローマ字→カナ変換モードを設けるに至った…というわけ。要は、改めてカナキー配列を覚え直す努力を怠った言い訳なんだけど、それが「バレるのが恥ずかしかった」につながった真相だ。いやはや何とも情けないお話。やっぱり永遠に内緒にしておくべきだったかなァ???