〜〜〜〜 ちょっと一言ご挨拶(2016.4.3)〜〜〜〜
すでに歴史上の名車となってしまったが、かつてニッサン・セドリックというトヨタ・クラウンのライバルと称された乗用車があった。1955年(昭和30年)に発売された初代のクラウンから遅れることおよそ5年。縦に並んだ2ツ目のヘッドライトが特徴のエレガントな姿が美しかった。
1年半後(1961年9月)のマイナーチェンジでヘッドライトの並びが横になり、よりスタイリッシュで都会的なデザインとなったのだが、このマイナーチェンジ後のセドリックの存在こそが、当時中学生になろうとする某少年に「時間なんていくらでもある!」と思わせた要因なのである。ということで、まずはそのセドリックの雄姿を見てもらいたい。
どちらかというと丸みを帯びたデザインのクラウンに対し、セドリックは名称(小公子の主人公)にふさわしい直線的なスマートさが魅力だった。ただし販売台数は常にクラウンの後塵を拝していて、それがまた判官びいきという日本人の心をくすぐる要素でもあったのだ。
初代のクラウンは、個人的には好きになれないレトロ感のあるデザインだったが、1958年のマイナーチェンジによってとても洗練された仕上がりになっていた。そういう意味では、それぞれに異なった魅力があったのだが、憧れていたのはやはり直線的なセドリックほう…。
当然、その先にあるのはプラモデル…だが、しょせんは子供のオモチャのレベル。本物への憧れを満たすものは存在していなかったのだ。となれば、満足できるものを自分で作るしかないッ!
材料はカステラの入っていた木箱の板。それを加工してボディを作り、ヘッドライトだけでなくフォッグランプ、ウィンカー、室内灯、ブレーキランプ、バックランプ…すべて点灯させる。さらには、自転車のブザーを応用してホーンも鳴らす。これを鉄人28号よろしくリモコン(ただし有線)で操るのだッ!!
中学生になったばかりの12歳の少年にとって、これは壮大なプロジェクトである。もちろん、図面どころかカタログも手元にない。街で見かけた実車の記憶だけをベースに、大好きなフロント部分からコツコツと完成形を夢見て製作に取り掛かったのであった。
いつ出来上がるのか…なんて考えもしない。諦めなければ、いつかはできる…な〜に、時間なんていくらでもあるのだから…。
だが、いちおうは勉強もしなければならないし、趣味の蝶収集やらトレーニング(犬の散歩程度)もしたいしマンガも読みたい。そんなこんなで、アッという間に中学生の時間は過ぎ去ってしまったのであった。完成まで、あと一息だったのに…。
それなりにセドリックに見えるだろうか? マブチのモーターを4個配した四輪駆動で、戦車のように片輪を止めて左右に曲がる。ドアだけでなくボンネット、トランクも開くし、シートだってフルフラットになる豪華仕様だ!
形としては出来上がったのだが、実はリモコンの製作のところで挫折してしまったのだ。その理由が、情けないことに目印もつけずに先にコードを束ねてしまったこと。これで、どれをどう配線すればよいかがわからなくなってしまったのだ…ア〜ァ。
こんな50年以上前の遺物が、ホコリをかぶったまま物置の片隅に残されていた。さすがに動かすことは不可能だが、青春の一端が形として残っていただけでも感慨深いものがある。惜しむらくはリモコン操縦ができずに終わってしまったことだが、それもまた実力という過去の現実を示す貴重な記憶…。
未完成に終わったとはいえ、木材をコツコツと加工した創意工夫とノウハウが、今この瞬間において朽ち果てる寸前だった田舎の離れ小屋を、DIYで山小屋風にリフォームするという道楽に、時空を超えて役立っているのだから、決して無駄な時間ではなかったのだ。ただ、努力に結果が直結していないところが、結局はどこか間の抜けた自分の人生そのものなんだよなァ…。。。