■ ご挨拶:第69回(2015年6月17日)■

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 本日のご来場、まことにありがとうございます。早いもので1983年に初めてパソコンなる機械に触れてから、32年もの月日が流れてしまいました。現在、手元にはそのとき購入したPC-8801と純88シリーズ最後の製品=PC-8801MCが完動品として保管してあります…が、いつ不具合が起きても不思議ではない状況です。
 現に、PC-8801に接続していたディスクドライブ(PC-80S31)は、一昨年白煙と共に動かなくなってしまったし、データレコーダー(←PC専用のカセットデッキ)も動作不安定で「役立たず!」の状態です。幸い、PC-8801本体のほうは音楽用のカセットデッキでかの『ホーンテッドケイブ』のロードに成功したことで、とりあえずは胸をなでおろしたのです…が。
 こんな落日の環境を案じて、ジョンさんの二度目のインタビュー時に一緒に来宅したゲーム保存協会(NPO法人)理事長のルドン・ジョゼフ氏が、なんと同協会の技術スタッフを伴ってわざわざ修理にやって来てくれたのです。まさか「修理可能だと思う」という何気ない会話から、ここまでの展開があるとは思ってもいませんでした。

 ゲーム保存協会(http://www.gamepres.org/)は、主に80年代のゲームを中心にソフトウェアや関連書籍を収集するだけでなく、それを劣化しない形にコンバートして未来への文化遺産として残すことを目的にした非営利団体です。
 考えただけでも膨大な手間と費用のかかる活動ですが、これを主催しているのがフランス人のジョゼフさん…というところが「驚き桃の木…」ではないですか!
 キックスターターを活用して書籍で当時を残そうとしたジョンさんはイギリス人でしたが、こういう異質な視点で日本のゲームを見る感性には心から拍手を送りたくなります。ゲームを制作していた当事者からすれば、当時の活況は「時代が生んだあだ花」にしか感じなかったのですが、それを浮世絵と同じく文化の消失と考えるところに頭が下がる思いです。
 そんなこんなで、ディスクユニット(PC-80S31)とデータレコーダの修理をしただけでなく、本体のほうも延命を図ってリフレッシュしてもらったのです。技術スタッフとして、忙しい本業を抱えながら遠方から修理に来てくれた福田さん…本当にありがとうございました。
 私には直接的に協会に協力できる技術も能力もありませんが、その時代の当事者として側面からサポートできればいいなァ…とボンヤリ考えています。というわけで、新日本プログラミングへ来訪されたついでに、ぜひともゲーム保存協会のHPも見てくださいネッ…というお知らせでした。

★★★ ゲーム保存協会 ★★★


〜〜〜〜 ちょっと一言ご挨拶(2015.10.17)〜〜〜〜

 PC-8801もマシン語プログラミングも、想い出がいっぱい詰まった懐かしいテーマではあるが、さりとて未来への展望が開ける素材には決してなり得ない。映画や音楽、漫画や小説、ファッションや流行…といったコンテンツ自体に「時代への順応性」があるものは、いつの日か復刻・リバイバルという未来形が存在するが、コンピュータに限らずハードウェアに直結したものは前進あるのみ。過去の遺物となったものが復活し、再び活躍する場面は想像すらできない。
 個人的に情熱を傾けられるのは、そこに未来への楽しみがあるものに限られる。それはたとえ小さな世界の出来事であっても、また他人には価値観が理解し難いものであっても、未来へつながる何かがあれば生きがいとなり楽しいのだ。
 …で、畑で作物を育てるのは収穫という夢があるからだが、実はアイデア次第でいろいろな夢を付加させることができる。現在は、その追加したほうの夢を実現させることが無性に面白い。

 元々は畑に水源がないので貯水タンクを置こうとしたことに始まる。最初はタンクを設置する台座が必要になり、次には屋根を設置しよう→農具も置けるようにしよう→休憩もできるようにしよう→レトロなバス停風にしよう→貯水タンクをトトロにしよう→ネコバスも作っちゃおう→遊び心でバス停も用意しよう…というふうに、次々と夢が膨らんでこうなってしまったのだ。
 ネコバスを作るからには、当然のことながら通路となる道路整備(?)もしなければならない。フト気がつけば、畑いじり以上の大仕事になっていたのであった…。
 エ、誰がネコバスに乗るのかって? いつかは孫が楽しんでくれるだろう…という淡い期待。ゲームのプログラミングをしているときの感覚に近いものがあるかもしれない。誰も興味を示さなかった地方の田舎の雑草ジャングルは、無用な数値で埋められた広大なメモリ空間のよう。これを意味のあるマシン語プログラムに置き換えれば、遊べるゲームとなって楽しめる…のだ。
 荒地をコツコツと開拓・開墾するプロセスは、実にクリエイティブでマシン語プログラミングに通じるものがある。この楽しみ方がプログラマーの名残りだとすれば、プレイヤーとなる次の世代には田舎がオリジナルのアトラクション(?)となる(…といいナァ)。というわけで、面白いけどムッチャ忙しい…。

 実は、そんなフロンティア的な野良仕事に興味を抱いた人物がもう一人いる。それが、誰あろうこのジョゼフさんなのだ。なんと自ら開墾して京人参を育ててみたいというから驚いてしまう!
 諸般の事情で畑そのものは私が耕したが、それでも東京から種蒔きにやって来るのは本気モードでなければできないこと。手間と費用を考えれば、買ったほうが安いに決まっているのに…。

 小雨降る夏に種を撒いてから2ヶ月弱。ようやく葉っぱが15cmほどに成長したところだが、土中の人参はどうなっているのだろう。寒い冬が来る前にちゃんと収穫できるのだろうか? 他人事ながら、そんな不安と期待が入り混じって、これまた小さな楽しみとなっているのである。