■ ご挨拶:第11回(1999年1月11日)■

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 新年あけましておめでとうございます。そして、本日のご来場、まことにありがとうございます。お陰さまをもちまして『おたすけ忍風伝』も無事に発売することができました。すでに、多くの忍者たちが栄光の仙人位を目指して日夜奮闘しているという状況……のはずだったのですが、現在のところはチョッピリ淋しい船出なのであります。アァ……。
 この『おたすけ忍風伝』は、ゲームのためのゲームではありません。一般ユーザーがゲームを作るためのテーマゲームです。もちろん、それなり以上に楽しく遊ぶことはできますが、最新テクニックや奥深いシナリオを求めるのではなく、ゲームを構成する基本ロジックに注目してほしいのです。ハデなグラフィックスや難解なナゾは、こうしたベースを着飾る化粧品にすぎません。RPGの基本を、ぜひとも『おたすけ忍風伝』を遊びながら盗み取ってください。
 ゲーム制作という知的な創作活動は、最も新しいワールドワイドな自己表現の手段です。この楽しさを、広く世間に認知されるよう新日本プログラミングはソフトハウスの枠に縛られずに孤軍奮闘しています。どうぞ、最新作『おたすけ忍風伝』を通じて、みな様の応援を切にお願い申し上げる次第です。


〜〜〜〜 ちょっと一言ご挨拶(2011.9.21)〜〜〜〜

 これまた当時の挨拶文については、どうでもいいことなのでノー・コメント。そして、半ば強引に引き延ばしてきた路上セールスの顛末も、これをもって最終回となる。

「そんなに払えるわけないでしょ。夕方までの数時間で、何本売れると思うの?」
「マ、それもそうだな。じゃ、今日だけということで試しにやってみるか…。でも、ここは場所がマズイから、もう少し向こうへ移動したほうがいいだろう」
 …というようなわけで、駐車場横のスペースを無償で提供してもらったのであった。それから夕方まで、売り上げが気になるのか何度か訪ねてきては「どォ、何本売れた?」なんて声をかけてくる。こうなると、見知らぬ通行人ばかりの中にあって、唯一の知人みたいになってしまうから不思議である。
 実際に売れたのは、怪しげな路上セールスにふさわしい数字。だが、結果の大小なんて問題じゃない。暗くなるまで販売努力をしたというプロセスに、この日の意義があったのだ。おまけに、顔見知りとなったオジさんは、同人ソフトとしてショップ売りを勧めるなど、意外な協力者に変身してしまった。当初の経緯からは、まるで信じられない展開ではないか…。
 こういうのを「ひょうたんからコマ」というのかもしれない。もっとも、いきなり同人ソフトとするのは商品コンセプトの違いから無理があったが、これをキッカケとして本格的なCDジャケットを作成したのだから、ありがたい提言だったといえる。
 ともあれ、こうして秋葉原裏通りでの貴重な体験は終了した。すっかり日の暮れた雑踏の中、まだ露店を開いているくだんのオジさんに最後の挨拶をし、清々しい気分で家路についたのであった。

===== おしまい =====

 いい歳をして…ということもあるが、なぜにここまでする必要があったのか、そう問われると返答に窮してしまう。だって、これはただ「やってみたかっただけ」だったからだ。こういうことができる自由と度胸があることを、身を持って体現したに過ぎない。
 寅さんのような気ままな暮らしに憧れる人は多いが、イザとなるといろいろなしがらみや体面が頭をもたげ、結局は尻込みしてしまう。そういう世間に対する、一種の反抗心のような意地があったのかもしれない…。