◆未来へのキャッチボール

 いっぽう、常に『PCマガジン』を送ってくれたラッセル社とは、この『燃える闘魂シリーズ』連載の前に、すでに2度ほど単発の仕事を引き受けていた。いわば、投げられていたボールを私が投げ返したというわけだ。結局は、そんなボールのやりとりが、この長期連載につながったのである。
 実は、小学館との関係も似たような経緯がある。それは、ちょうど『ガンダーラ』が発売されたときのこと。このゲームが、記事やマンガとなって『ポプコム』に大きく取り上げられたのである。当然、そこには編集者との出会いがある。私は、掲載されたことをキッカケに、毎号『ポプコム』を送ってくれるように頼んだ。これは、本をタダで読むためではなく、接点をキープしたいというボールを投げたのである。
 それに対して、ポプコム編集部は快くボールを投げ返してきた。そうなれば、こちらからもまたボールを投げることができる。やがて、軽〜く『ポプコム』に原稿を書くようになり、ついには重〜く単行本まで出版するという関係に発展したのである。
 もちろん、いつどこででもボールを投げれば返ってくるというものではない。ボールが難しくて取れないこともあるし、エラーをすることもある。忙しくて返球できないこともあるだろう。なにしろ相手あってのこと。運とタイミング、そしてなにより両社の気持ちが一致しなければキャッチボールにはならない。
 だが、どちらかがボールを投げなければキャッチボールが始まらないのも事実。小さな接点は、最初にボールを投げるチャンスであり、そこには大きな人脈へと発展する可能性が秘められている。営業…すなわち「出会い」を求めることは、もしかすると人生そのものなのかもしれない。


★ポプコム編集部★
 正確には、小学館発行の書籍の編集やソフトウェアの企画/開発などを行っていた(株)新企画社のことを指す。小学館発行の書籍といっても、実際には『ポプコム』に関連するものだけであり、それ以外の雑誌に関わっていたわけではない。
 啓学出版の倒産と時期も同じ1994年に、肝心の『ポプコム』が事実上の廃刊となる休刊となってしまったことで、企業としての役割も終えてしまったような感がある。
 もっとも、天下の小学館の関連企業であったことから、表立っての廃業ということではなく徐々にフェードアウトするように消滅したというほうが適切だろう。実際、2002年のころに一度だけコンタクトを取ったことがあるが、自費出版をサポートするという形態の編集業務を行っているとのことであった。
 今日現在(2015.3.10)において、HPはもちろん存在を示す形跡が見当たらないことから、おそらくは細々とした活動も行っていないのではないだろうか。パソコン誌には珍しく門外の芸能人や著名人を紙面に登場させて賑わっていただけに、いかにも栄枯盛衰のドラマを見るような現実の儚さを感じずにはいられない。